2012-01-01から1年間の記事一覧

アメリカの強制医療の根拠(2)

精神障害者福祉と司法作者: 岩井宜子出版社/メーカー: 尚学社発売日: 2004/04メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログを見るポリス・パワーによる強制医療の根拠 強制入院が、精神病者個人の利益を増進させるためというより、社会の利益を守るた…

アメリカの強制医療の根拠(1)

精神障害者福祉と司法作者: 岩井宜子出版社/メーカー: 尚学社発売日: 2004/04メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログを見る このパレンス・パトリエに基づく収容は、あくまで精神障害者の利益のために国が保護者として、治療のための拘束を行う…

医療観察法はポリスパワーかパレンスパトリエか

刑事政策作者: 川出敏裕,金光旭出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2012/05/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 精神医療の強制を正当化する根拠をめぐっては、2つの基本的な考え方が存在する。その一つはポリスパワーに基づくもので、精神障害者の…

刑法39条は必要か(2)

近代フランス刑事法における自由と安全の史的展開作者: 平野泰樹出版社/メーカー: 現代人文社発売日: 2002/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 前述のように、ユトレヒト学派の共同研究およびジュネーブの共同研究においては、精神医学の立場から…

刑法39条は必要か(1)

近代フランス刑事法における自由と安全の史的展開作者: 平野泰樹出版社/メーカー: 現代人文社発売日: 2002/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 第2款 責任化の主張 右にみた刑事責任の新しい思潮の中で注目すべきは、「責任感覚」の存在について…

刑事責任の歴史(2)鑑定人の役割

近代フランス刑事法における自由と安全の史的展開作者: 平野泰樹出版社/メーカー: 現代人文社発売日: 2002/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 第4節 刑事責任の新しい思潮 第一款 精神医学の発達と責任無能力・限定責任能力観念の老化 まず、刑…

精神医学による刑事責任の観念の歴史

近代フランス刑事法における自由と安全の史的展開作者: 平野泰樹出版社/メーカー: 現代人文社発売日: 2002/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 終章 刑事責任再検討の思潮と精神医学 第二節 精神医学による刑事責任の観念の進化 責任無能力者は不…

医療観察法はパレンスパトリエが根拠か

と、前回の記事から2日後に以下の記事を見つけたので紹介する。再犯の可能性を逆に制約を小さくすると受け止める考えもあるみたいだ。季刊 刑事弁護63号作者: 季刊刑事弁護編集部出版社/メーカー: 現代人文社発売日: 2010/07/16メディア: 単行本 クリック: 3…

医療観察法の医療強制の根拠

臨床精神医学 2010年 10月号 [雑誌]出版社/メーカー: アークメディア発売日: 2010/10/13メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る中の「司法精神医学の法的課題―心神喪失者等医療観察法を中心に」(山本輝之)より 2医療の強制の根拠 (1)まず、医療観察…

大阪地裁判決の波紋〜発達障害をどう支えるかのまとめ

TV

10月10日に放送のNHK「ハートネットTV」のまとめ私の感想:街の人の声で、責任能力が認められたのなら仕方がないとのことだが、私の感想としては障害のある人が自分のしたことで健常人と変わらない判決を受けるのなら責任能力あると納得できるのだが、重くな…

スウェーデンの刑法と精神障害者の処遇(3)

触法精神障害者の処遇 【増補版】作者: 町野朔,中谷陽二,山本輝之出版社/メーカー: 信山社出版発売日: 2006/09メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見る Ⅲ 法改正の動向(略)スウェーデンでは、患者の福祉と必要性の観点から、束縛、隔離な…

TV:大阪地裁判決の波紋〜発達障害者をどう支えるか

来週の水曜日(10月10日)のハートネットTV(NHK Eテレ 20時〜)のお題は「大阪地裁判決の波紋〜発達障害をどう支えるか」だそうだ。 ダイヤモンドオンラインでも発達障害40代男性による姉刺殺事件の判決に波紋 「社会に受け皿がないから懲役20年」の是非を問…

スウェーデンの刑法と精神障害者の処遇(2)

触法精神障害者の処遇 【増補版】作者: 町野朔,中谷陽二,山本輝之出版社/メーカー: 信山社出版発売日: 2006/09メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見る (3)処分終了の手続き すでに述べたように、治療処分には、退院特別審査を要する場合…

スウェーデンの刑法と精神障害者の処遇(1)

触法精神障害者の処遇 【増補版】作者: 町野朔,中谷陽二,山本輝之出版社/メーカー: 信山社出版発売日: 2006/09メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見る Ⅰはじめにスウェーデン刑法は責任能力という概念を有しない。いかなる者も罪を犯せば…

触法精神障害者の再犯率は一般犯罪者の4分の1

すなわち、精神疾患を患うものは、そうでないものと比べて再犯の恐れが高いから、精神障害者の強制入院は正当化されるという主張であるが、どうだろうか。不起訴処分、あるいは裁判所で刑の減免を受けた触法精神障害者の11年間での再犯率は21.8%である。こ…

重度の精神障害者でも病院外で生活できるのか

精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本作者: 大熊一夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/10/07メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 77回この商品を含むブログ (31件) を見る妄想があっても、病院外で生活できることを強調する本である。べてるの家な…

精神障害者の凶悪犯罪比率が高い根拠はかさ上げされている

精神障害者の殺人全体に占める割合は9.6%と言う数字が世間を歩いているが、これは『精神障害者』のみならず『精神障害の疑いのある者』を含んでいる。イラン人がいたとして、イラン人らしき人が殺人を犯したので、イラン人の殺人者率が高くなっても不本意だ…

はじめに

アメリカのほうでは刑法39条に相当する法律の条文がない州もあるという噂を聞き、それはどのような仕組だろうと気になってから数年たつ。何かきっかけでもないことにはずっと放置したままであるだろう。きっかけとしてブログを開設することにする。刑事法、…

1年で心神喪失で無罪となった触法精神障害者は11名

よく耳にする、「精神障害者は犯罪を犯しても刑法39条によって無罪放免になっている」という言説は正しいのだろうか。このことを根拠に、受刑の代わりに、精神障害者の強制入院は正当化されると主張されることがあるが、どうだろうか。しかし、実は、不起訴…