2013-01-01から1年間の記事一覧

行為無価値論をとると倫理主義になるか?

集中講義 刑法総論作者: 川端博出版社/メーカー: 成文堂発売日: 1997/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る すなわち、「結果無価値論は脱倫理化をもたらすので妥当であるが、これに対して行為無価値論は刑法の倫理化を招くので不当である」、と主…

錯誤論(2)

集中講義 刑法総論作者: 川端博出版社/メーカー: 成文堂発売日: 1997/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る すなわち、観念的競合は犯罪が成立した後の問題ですから、犯罪の成立の根拠とはならないとされるのです。犯罪が成立した後に、それが一個…

錯誤論(1)

集中講義 刑法総論作者: 川端博出版社/メーカー: 成文堂発売日: 1997/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る そもそも錯誤論は、行為者の認識した事実と現実に発生した構成要件的結果が一致しないばあいに、その発生した結果について故意を認めても…

刑法における因果関係

集中講義 刑法総論作者: 川端博出版社/メーカー: 成文堂発売日: 1997/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る川端先生と私の関心は重なるかもと思って、川端先生の本を買ってみたら、ドンぴしゃであった。平面的に並んでいたことの関係性が分かった。…

精神障害者が正当防衛のつもりで犯す犯罪は違法性の錯誤?

と表題は独学で勉強していて断言していいのかわからないのですが。いや、その前に責任があるかないかの問題になりそうなのですが、限定責任の場合を考えるとそうなるのが妥当っぽい気がするような気がする、ぐらいなものですが。それとも過剰な正当防衛に当…

行為無価値にも一理ある

刑法総論の理論構造作者: 井田良出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2005/06/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る 現在の通説によれば、犯罪とは、構成要件に該当し、違法で、かつ有責な行為である。そこでは、第1段階の構成要…

事実の錯誤か違法性の錯誤かでの違い

違法性の錯誤の実体 (刑事法研究)作者: 中山研一出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2008/02/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 周知のように、わが国の判例では、違法行為の遂行に関して行為者に錯誤があった場合に、それが構成要件に該当する事実…

過失犯理論の現状とその課題

変革の時代における理論刑法学作者: 井田良出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2007/07/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る「過失とは、予見可能な結果を予見しないことである」という古典的定義が否定されるのは分かる。例えが…

罪には同じだけの罰を、に何を思わず頷く人は多いのだろうか

僕たちの時代作者: 青木理,久田将義出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2012/12/25メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る死刑の根拠について 青木 いっそもっと分かりやすく、復讐なら復讐だと言えばいい。復讐として殺すのなら…

犯罪の事前的予防にも長所あり

変革の時代における理論刑法学作者: 井田良出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2007/07/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 一般的にいえば、事後的処罰より事前的予防のほうが犯罪防止の上での有効性が高い。しかしながら、事前…

なぜ責任を問うことができるのか

はじめて学ぶ法哲学・法思想―古典で読み解く21のトピック作者: 竹下賢,市原靖久,桜井徹,角田猛之出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2010/04/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 34回この商品を含むブログ (3件) を見る しかし、ストーブから出火し…

心神喪失を認める伝統があるってそれでは

フーコー・コレクション〈1〉狂気・理性 (ちくま学芸文庫)作者: ミシェルフーコー,小林康夫,松浦寿輝,石田英敬,Michel Foucault出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/05/01メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 21回この商品を含むブログ (38件) を見る 高等…

明治時代における旧刑法の成立まで

刑法学のあゆみ (有斐閣新書)作者: 三井誠,町野朔,中森喜彦出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1978/01メディア: 新書この商品を含むブログを見る 大政奉還の後、新政府は、刑法はこれまでの通りにしておくよう、幕府に指示したが、間もなく、明治新政府によっ…

ドイツ刑法学の歩み

刑法学のあゆみ (有斐閣新書)作者: 三井誠,町野朔,中森喜彦出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1978/01メディア: 新書この商品を含むブログを見るまとまらなかったので、散文的にツイートしました。https://twitter.com/search?q=from%3A4123y%20since%3A2013-8…

医療観察法の現状と課題(2011年)

刑法・刑事政策と福祉?岩井宜子先生古稀祝賀論文集作者: 町野朔,岩瀬徹,日?義博,安部哲夫,山本輝之,渡邊一弘出版社/メーカー: 尚学社発売日: 2011/12/20メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る医療観察法は施工後5年を経過した場合におい…

応報刑法と目的刑法の統合

刑法総論の考え方・楽しみ方 (法学教室ライブラリィ)作者: 佐伯仁志出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2013/04/27メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る 現在では、刑罰は応報であると同時に犯罪予防の効果を持つことによって正…

マクノートン・ルール

刑事司法と精神医学―マクノートンから医療観察法へ作者: 中谷陽二出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 2013/01/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る イギリスでは古くからインサニティが司法の場で議論された。オームロードによれば、18世紀か…

違法性の錯誤

ブログを開始時では、触法精神障害者に責任を認めさせるには、錯誤の点から見ればどうか、と根拠なく漠然と思っていた。基礎から学ぶ刑事法 第4版 (有斐閣アルマ)作者: 井田良出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2010/04/03メディア: 単行本(ソフトカバー)購…

新受刑者に占める精神障害者数

刑事政策概論作者: 木村裕三,平田紳出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る平成17年の新受刑者に占める精神障害者数新受刑者32789人のうち精神障害者は2151人(6.6%)、内訳では知的障害287人(0.…

古典学派と近代学派

ビギナーズ刑事政策作者: 守山正,安部哲夫出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2011/06/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る 19世紀後半、西ヨーロッパでは、刑法に関し、主に2つの学派が存在していた。どちらも人には意志自由が存在す…

刑事司法の私事化

ビギナーズ刑事政策作者: 守山正,安部哲夫出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2011/06/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る 一般に、刑事政策とは、犯罪防止を目指す国家または地方自治体の活動であるとされる。これについては、刑事政…

触法心神喪失者と触法少年に関する社会的見方の差

ビギナーズ刑事政策作者: 守山正,安部哲夫出版社/メーカー: 成文堂発売日: 2011/06/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る 2003年制定の「心神喪失者等医療観察法」の国会審議での最大の修正点は、入退院の要件から「再犯のおそれ」を…

結果無価値論と行為無価値論とは

基礎から学ぶ刑事法 (有斐閣アルマ)作者: 井田良出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1995/12/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 犯罪行為の本質的内容の把握をめぐっては、根本的な見解の対立がある。とくに、旧派と新派との間の学派の争いの中で基…

地域生活定着支援センターとは

司法福祉作者: 日本司法福祉学会出版社/メーカー: 生活書院発売日: 2012/02/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 刑事司法の一環である更生保護が焦点を当ててきた「犯罪性」に加えて、障害や高齢であるというハンディキャップをを抱えたものによ…

保安処分の歴史

刑法原論 (岩波テキストブックス)作者: 内藤謙出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1997/10/15メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 刑罰と保安処分の関係についても、後期古典派的な「責任」に対しては「刑罰」を、新派的な「行為者の危険性」に対して…

一般予防、特別予防とは

基礎から学ぶ刑事法 (有斐閣アルマ)作者: 井田良出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1995/12/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 一般国民の犯罪を予防すること、すなわち一般予防 犯罪者個人が再び犯罪を行わないように予防すること、すなわち特別…

応酬刑論、目的刑論の問題点

基礎から学ぶ刑事法 (有斐閣アルマ)作者: 井田良出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1995/12/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 応酬とは、違法な行為に出たことに対する非難、すなわち責任の程度に見合った苦痛を与えることであり(応報というと、…

なぜ人を罰するのか

入門刑事法 第4版作者: 三井誠,曽根威彦,瀬川晃出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2009/11/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る それでは、なぜ人を罰するのでしょう。これは「刑事論」の基礎となる問題で、長い間論争が繰り広げら…

責任主義とは

入門刑事法 第4版作者: 三井誠,曽根威彦,瀬川晃出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2009/11/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 罪刑法定主義と並ぶ、近代刑法の基本原理が責任主義であって、これによれば、違法行為を犯したことに…

医療観察法批判

刑事政策のすすめ―法学的犯罪学作者: 前野育三,松原英世,平山真理,前田忠弘出版社/メーカー: 法律文化社発売日: 2007/04メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る 精神障害のある犯罪者の処遇について、心神喪失者等医療観察法は、…